近代児童文学の開拓者   山内 秋生 (やまのうち しゅうせい)   (1890.10.29~1965.11.9)   

  作家、評論家。本名千代吉、のちに秋生(あきお)と改名。明治23年10月29日、  現在の南会津郡只見町に生まれる。明治37年3月、小林小学校を卒業。翌2月、上京  し、巌谷小波の書生となる。攻玉社中学校第2学年に編入したが、結核を患い卒業目前  にして退学。一時帰郷して療養に専念する。回復後、再び上京し、雑誌編集者、新聞記  者となり生計をたてる。大正10年から2年間、日本大学文学部の講義を聴講する。ま  た、明治41年より田山花袋に師事し、短編「瞬間」(『文章世界』掲載)などの小説  を発表し、後に抒情小品『春の別離』を刊行している。   大正元年には、竹貫佳水、蘆谷蘆村、大井冷光、小野政方らと、日本初の児童文学団  体である少年文学研究会を設立した。会の目的は、児童雑誌や読物の向上と新時代の真  正少年文学の樹立、そして児童文学の研究創作発表を行うことであった。   以後、『少年世界』*1『少女世界』*2等の児童雑誌に童話を発表して活躍するように  なる。作品集『父のふるさと』の表題作は、秋生自身の故郷奥会津を舞台としており、  「はしがき」には、「美を求める心」が童話を書く心構えであると述べている。   童話集は他に、『螢のお宮』『とんぼの誕生』『春の野のゆめ』、少女小説集には  『月夜のなげき』、空想科学小説『海底探検』、再話物として『イソップものがたり』  がある。   大正11年に、蘆谷蘆村の日本童話協会の創立に関与する。大正15(12月に昭和に  改元)年には、小川未明、楠山正雄、鹿島鳴秋、蘆谷蘆村、浜田廣介が創立準備をした童  話作家協会を発足させる。秋田雨雀、沖野岩三郎、小野政方、酒井朝彦、渋沢青花、藤沢  衛彦、村山籌子が共に参画した錚々たる会であった。戦前の童話作家の拠点であったこの  会は、童話文学作家を主体としている点に特色があり、発足時35名の会員は、のちに   75名前後となっている。秋生も同協会の出版物に多くの作品を載せている。また、児童  文学の研究、評論においても独自の見識を有し、『日本童話選集 第2集』の附録として  執筆した「明治大正の童話界」は、近代日本児童文学史の嚆矢として貴重な資料である。  会員自選の年刊作品集『日本童話選集』は、出版社を変えながら戦時統制期の協会解消ま  で、毎年刊行された。   また、改造社版『日本文学講座』に「少年文学研究」を執筆し、児童文学を文学研究の  対象とする先駆けとなった。その他、児童文学に関する断片的な解説、評論の類も多い。  新潮社版『日本文学大辞典』の児童文学関係の項目立てに参与したり、講談社版『小川未  明童話全集』(全12巻)*3を滑川道夫と編集をするなどの仕事も手がけた。   秋生は、児童文学者であるとともに、俳人としても知られており、「短歌俳句の作り方」  の実作指南も記している。他に、東京書道教育会東京ペン字教育会の理事も務めている。  昭和38年、日本の児童文化に尽力した功績により、日本児童文芸協会から第五回児童文  化功労者として表彰された。   後年、郷里の有志により、秋生の児童文学に対する功労を記念する句碑が、只見町大倉  のつつじ公園に建立された。その句碑には次のように刻まれている。   故郷よ 山川よ つばめ来るころよ   昭和40年11月8日、秋生はその除幕式のため20年ぶりに帰省し、翌9日、郷里只  見町の生家で急逝した。  *1『少年世界』博文館(1895-1933)には、「秋海棠におく露」(12.10)発表が皮切りとなる。  *2『少女世界』博文館(1906-31)には「最後の花」(12.11),「花に降る雨」(14.4)他発表。  *3『小川未明童話全集』(1950-52) 「あとがき」,改版(1958)には「解説」を著している。 【作品紹介】 ◇「瞬間」『文章世界 第5巻第2号』1910.2 ◆『春の別離』春水社 1921 ◆『螢のお宮』精華堂書店 1925 ◆『月夜のなげき』大興社 1927 ◇「明治大正の童話界」『日本童話選集2』 童話作家協会編 丸善 1927 ◇「明治大正の童話界」『日本童話選集2』 (復刻版) 童話作家協会編 大空社 1983  913.8-ニ ◇「少年文学研究」『日本文学講座 14』 改造社 1933 ◆『とんぼの誕生』良国民社 1942 ◆『父のふるさと』愛育社 1946 ◆『父のふるさと』愛育社 1946 (自館複製本) 913.8-ヤ ◆『春の野のゆめ』紀元社 1948 ◆『海底探検』昌平社 1948 ◆『イソップものがたり』昌平社1948 ◇「短歌俳句の作り方」『短歌・俳句春暁抄』 文果社 1959 【参考文献】 ◆『明治大正文学美術人名辞典』松本龍之助:著 国書刊行会 1926 ◆『日本文学大辞典 7』新潮社 1951 ◆『現代児童文学辞典』宝文館1955 ◇「山内秋生逝く」『日本児童文学 第12巻第1号』 宣協社 1966.1             ◆『芽 第2集 山内秋生追悼号』 只見ペンクラブ1966.3  ◆『日本近代文学大事典』講談社 1984 ◆『児童文学事典』東京書籍 1987 ◇「山内秋生・素描 会津出身の児童文学者」菅野俊之  『総合雑誌ふくしま 第6号』ふくしま出版委員会 L051-F11-6 ◇「子供の本にささげた人生 上,下」 大堀高夫 福島民報 1988.3.28 ,4.4 ◇「ふくしまの名著 2 父のふるさと」 菅野俊之 『文化福島 vol.197』1988.5 LZ706-F4 ◆『会津文学碑散歩 増補』星勝:著 会津文化財調査研究会 1991  ◆『日本児童文学大事典』大阪国際児童文学館 1993 〈児童図書研究室:鈴木史穂〉