雑誌「少年園」編集主任   高橋 太華 (たかはし たいか)   (1863.8.12~1947.2.25)

 作家、出版人、漢文学者。本名次郎。号は高橋七郎、太華山樵、頽花学人、頽花散人、  頽花老人、撮嚢菴、岳仙叟、日暮の翁、昔の翁など。   文久3年8月12日、現在の二本松市に、二本松藩の剣術指南である根来正緩の次男  として生まれる。父の死に伴い、高橋姓(母の旧姓)を名乗る。慶応4(9月8日に明  治に改元)年、藩校敬学館に入学し、漢詩文を学び始める。明治6年、郡山小学校に入  学。同8年、安積郡速成教育講習科を卒業し、福島県下で教員生活を送る。   明治14年上京し、漢学者岡鹿門の塾に入り、翌年には塾頭となる。明治16年3月、  堤正勝に学ぶ。また中村正直・重野安繹に師事し、詩文を修める。同8月に、東京大学  文学部古典講習科に入学するが、明治18年2月、病気のため退学する。   明治22年、文部省で教科書編集をしていた友人の山県悌三郎と、『少年園』を創刊  する。月2回発行の同誌は、当時の少年雑誌の先駆であり、児童文芸の興隆をもたらし  た。この雑誌は、子供達の心をとらえ、爆発的人気を博した。学校教科欄・文芸欄・報  道欄・投稿欄等を設け、山県悌三郎を主筆に、井上哲次郎、森鴎外、坪内逍遥、幸田露  伴、落合直文、若松賤子などが名を連ねるという質の高い教養雑誌であった。特に、  「芳園」という投稿欄は好評で、翌年5月にはこの欄を独立させ、『少年文庫』*1とい  う新たな雑誌を発行する。伊良子清白、北原白秋、三木露風はここから誕生した。   しかし、太華は明治22年5月、第13号をもって主任を降りる。同年7月、同郷で  親交の深い石井研堂が携わった少年雑誌『小國民*2』の創刊に協力するためだったとい  われている。『少年園』では父兄に宛てた創刊のメッセージを、『小國民』では「幼年  諸君に告ぐ」とし、直接子供たちに呼びかけているところに、この雑誌の姿勢が窺える。  『小國民』は子供達の心をつかみ、当初月1回発行が増版を重ね、月2回発行となる。   太華は、『小年園』『小國民』の編集を通し、欧米の文学を紹介しながら自身でも史  伝やお伽話などを発表する。史伝には、『河村瑞賢』『太閤秀吉』『新太郎少将』『葛  飾北斎』があり、和漢の古典と戯作文学や浮世絵などの深い素養に基づく、緻密な史実  考証による作品を遺している。「舞衣」「有馬竹」などの小説も遺している。明治18  年から同30年まで発表されたストセラー政治小説『佳人之奇遇』は、会津出身の人気   作家東海散士の原案・草稿の下に、太華が執筆したといわれている。   根岸党*3の文人とも呼ばれ、饗庭篁村、幸田露伴、森田思軒、岡倉天心等との交流も  深く、洒落や風流を愛し、川柳や狂歌も残している。特に幸田露伴とは親交が厚かった。  このことは、露伴が記した『まき筆日記』*4の基となる旅に同行している他、露伴全集  の中には多数、太華宛の書簡が納められていることからも窺える。このような太華の人  脈が、『小國民』の執筆陣へと繋がっている。   その後、明治33年には岡倉天心創設の日本美術院に招かれ工芸家の養成にあたり、  明治44年、農商務省関係の仕事に就く。   昭和6年~16年、駒沢大学で漢文学の講師を勤め、昭和15年、邦訳した「落陽  伽藍記」(『國譯一切経 和漢撰述部 史傳部17』収録)が刊行される。   昭和22年2月25日、84歳で死去。  *1 『少年文庫』1889年8月~95年7月。はじめは『少年園』の別冊雑誌として創刊された。  *2 明治28年11月12日発行から『少國民』と改題される。  *3 根岸近傍に住んでいた江戸時代末期に生まれた洒脱な気質の文人達。  *4 『明治文学全集94』筑摩書房1974 他収録。 【作品紹介】 ◆『河村瑞賢』博文館 1892   LA913.8-T2 ◆『太閤秀吉』博文館 1893 ◆『新太郎少将』博文館 1893 ◆『葛飾北斎』学齢館 1893 ◆『少年園』(復刻版)不二出版1988 JZ051-シ ◆『小國民』(復刻版)不二出版1998-99 LA051-I2-1 ◇「舞衣」「有馬竹」『小説百家選1』  春陽堂1894 ◇「落陽伽藍記」『國譯一切経 和漢撰述部  史傳部17』大東出版社 1930 ◇「落陽伽藍記」『國譯一切経 和漢撰述部  史傳部17 改訂』大東出版社 1980                183-K5-236 【参考文献】 ◆『二本松寺院物語』平島郡三郎:著   二本松公民館 1954     ◇「『東洋之佳人』稿本並びに高橋太華関係 書簡」『国文学論叢 第5輯 近代文学』  至文堂 1962 ◆『近代文学の異端者』岡保生:著 角川書店1976       ◇「忘れられた郷土作家・高橋太華」  『福島県立図書館報あづま 第31巻第3号』福島県立図書館 1981.3 ◆『日本児童文学案内』鳥越信:著 理論社  1982            ◇「『佳人の奇遇』成立考証序説」 大沼敏男『文学 vol.51』 岩波書店  1983.9          ◆『日本近代文学大事典』講談社 1984 ◆『雑草の栞 第5号』雑草文庫 1985.9.15 ◆『石井研堂』山下恒夫:著 リブロポート 1986   ◆『児童文学辞典』東京堂出版 1987 ◆『日本の児童文学 1』大月書店 1987 ◇「高橋太華の児童文学―史伝とお伽話を中心に―」上田信道:著  『児童文学研究 第26号』 日本児童文学会1993.9 ◆『明治少年文学史 1』木村小舟:著 大空社 (1949年刊童話春秋社 復刻)1995 ◆『伝記児童文学のあゆみ』勝尾金弥:著 ミネルヴァ書房 1999   〈児童図書研究室:鈴木史穂〉